玄米菜食は日本生まれ
玄米菜食とはマクロビオティックともいい、玄米、全粒粉を主食とし、主に豆類、野菜、海草類から組み立てられた食事で、長寿法や生き方、哲学あるいは思想でもあります。菜食、自然食、マクロビという呼び方もされます。日本生まれでありながら、欧州や米国西海岸の高感度の人達で人気となり世界中に広がりました。玄米菜食主義では肉類・卵を食べないという考え方もあります。
最近になって、日本食がユネスコ無形文化遺産に登録されました。日本食は、島国である日本の地産地消となる新鮮な食品である米、野菜、魚、肉を材料に、かつお節や昆布によって基本の出汁をとり、味噌や醤油などの発酵食の調味料を用いて料理します。四季に合った彩と味わい、栄養のバランスが整っていてしかも健康にいいとしてユネスコの無形文化財として登録認定されました。
ユネスコで登録されている食文化として日本食以外に、地中海沿岸地方の食文化が登録されています。地中海沿岸の南イタリアやギリシア、スペイン、モロッコなどでは主食となる穀物(パスタ、パンなど)をしっかり摂り、野菜、果物、豆類などの植物性食品と、この地方特産のオリーブオイル、チーズなどの乳製品や新鮮な魚介類などを中心に食事が構成され、肉類の摂取はわずかなのです。
地中海食が健康的であると注目されることになったのは、米国の研究で地中海沿岸諸国では米国や北欧より心臓病や脳血管障害などの生活習慣病の発症率や死亡率の低いことが明らかになったことによります。その後この地方の食事は認知症予防にも関連すると研究が続けられています。オリーブオイルや魚類などは不飽和脂肪酸を、トマトや人参などは高カロテノイドを含む食品を多食するのが特徴です。
玄米菜食のやり方や食べ方の基本
玄米菜食の効果的な方法は次にある基本的な規則を守って自分なりに工夫していくことです。地産地消でその時期の旬の食品を、根も皮も捨てず、まるごと食べましょうという規則は地球環境を守ろうというエコロジーの気風にも通じる感があります。
- 玄米や雑穀、全粒粉の小麦製品などを主食とし、野菜、穀物、豆類などの農産物、海草類を副食とする。食品の選択の際、近隣で収穫された旬の有機農産物や自然農法による食品が望ましい。
- 砂糖を使用しない。甘味は米飴・甘酒・甜菜糖・メープルシロップなどで代用のこと。
- 鰹節や煮干し、昆布、シイタケなどの出汁を使用する。
- 肉・卵・乳製品は原則として食用としない。
ベジタリアンやビーガンなど良く似た感覚の食事法もありますが、思想や主義などを重んじるばかりに身体を損なうほどその主義に基づく食事を続けては本末転倒ではないかと実は議論もされています。
玄米の力
玄米とは、稲の果実である籾(もみ)から籾殻(もみがら)を除き、精白されていない状態の米のことをいいます。精白されていないのでベージュ色または淡褐色をしている米です。精白とは、玄米から糠(ぬか)を取り除き白米にすることで、精白されていない玄米は、白米よりビタミン・ミネラル・食物繊維を豊富に含んでいるので、健康食品として用いられています。
玄米はビタミンB1を多く含み、皮膚や粘膜の保護や維持をし、糖質から活動エネルギーを産生する際に代謝機能を助ける役目をします。さらに、食物繊維は消化管を刺激し、とくに大腸のぜん動を促し便秘を予防します。また豊富なカリウム、ナトリウム、マグネシウム、亜鉛などのミネラル成分は体内の筋肉や神経の働きの調節や、炭水化物やたんぱく質、脂質などの代謝にも深く関わっています。
玄米甘酒の効果・効能は?簡単で美味しいおすすめレシピや作り方を紹介
合わせて読みたい「デブ卒」の記事!
菜食の力
本来低脂肪で低カロリーであった和食ですら高脂肪高カロリーに傾いている現状があります。それは肉や魚、乳製品などの高脂肪で高カロリー中心の食事の方が美味しいと感じるからです。心臓病や脳血管障害、がん、糖尿病などの病気にかかる人は年々増加の一方です。この現状に対して、厚生労働省のホームページでは、特に成人に対して一日に350gの野菜を摂取するよう推奨しています。
一日に食べる野菜の量として両手に一山程度です。どうですかこの量を毎日摂れていますか。赤、緑、黄など色とりどりの野菜には、身体に必要な栄養素であるビタミンやミネラル・食物繊維が多く含まれています。国内外の多くの研究で、野菜を多く食べる人のほうが、そうでない人に比べてより脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率を低下させるという結果が出ています。
野菜に含まれるビタミンは、主食であるご飯やパンなどに含まれる炭水化物が、身体のなかで活動するためのエネルギーに変わる手助けをしています。摂取した栄養素が体内で利用されるためには、ビタミン類(特にB群)を摂ることが必要になります。またミネラルは、生体機能の維持・調整に不可欠です。特に野菜に多いカリウムは、余分なナトリウム(食塩)を体外に排泄するのを手助けします。
さらに高血圧の予防にもなります。特に色の濃い野菜(カボチャ・水菜など)にはカルシウムも多く含まれています。野菜は低脂肪、低カロリーでありながら「ボリューム」が多いことから、満腹感を与えてくれます。また豊富に含まれる食物繊維のおかげで、消化管を通過するときに刺激となって、大腸のぜん動を促し、便秘を予防します。菜食は身体の本来の機能を助ける力が備わっています。
地中海沿岸地方の食事
地中海沿岸地方は温暖で乾燥した気候です。この風土独特の料理を食べるのを地中海式ダイエットといいます。ダイエットというのは減量のことばかりではなくて、「健康的な身体になる食事」という意味です。地産地消、シンプルで豊かな地中海沿岸の山や海の幸を丸ごと食べることが、健康的な生活に繋がるとしています。次は地中海式ダイエットのバリエーションです。美味しそうですね。
- 穀物、豆、野菜、果物を多く摂る
- オリーブオイルを豊富に摂る
- ヨーグルトやチーズなど乳製品を適量食べる
- 魚介類は週に数回食べる
- 牛肉や豚肉などの肉は控えめに
- 食事とともにワインを1、2杯飲む
温暖で乾燥した土地特産のオリーブオイルをふんだんに使った伝統的でシンプルな料理であるイタリア料理はじつはフランス料理の起源といわれています。オリーブオイルは不飽和脂肪酸であるオレイン酸を含み、悪玉コレステロールを除去、過酸化脂質の生成を抑制します。さらにこの地方では食事の際にワインを飲みます。ワインはアンチエイジングや抗酸化作用のあるポリフェノールを含みます。
坂が多く石畳の街を上る必要のある暮らしでは自ずから身体を動かす必要があります。食事の準備や食卓を囲む際にも時間をかけて家族が語らい、こうした生活習慣がスローフードと呼ばれ、健康づくりの基本となっています。地域の菜食と海山の幸の食が穏やかで緩やかな気候になじんで無理のない暮らしが生活習慣病予防や長寿に繋がっています。
玄米菜食のレシピいろいろ
玄米菜食に添ったレシピをいくつか紹介します。分量は目安です。何度か試しているうちに自分にあった塩加減、甘さ加減などもわかり、アレンジなど加えながらオリジナルレシピが出来上がっていくと思います。どうぞ自由に試してみてください。
簡単豆腐のヨーグルト
材料
- 木綿豆腐(水切り前)200g
- 玄米甘酒 100cc
- レモンの絞り汁 大さじ1
作り方
- 木綿豆腐はさっと湯通ししてから約30分ほど置いて、布でよく水を切る。
- スピードカッターかジューサーに1.を入れて、なめらかなクリームになるようにする。
- 玄米甘酒を加えて、さらになめらかにし、最後にレモンの汁を加えてもう一度ジューサーにかける。
- 器に移して冷やして少し固める。
キャロットクッキー
材料
- 人参中サイズ 2本(200-220g位)
- オーツ麦 カップ1/2 (125ml)
- コーンフラワー小麦粉 カップ1/2
- 豆乳 大さじ 3 (60ml)
- メープルシロップ 大さじ 2 (40ml)
- オリーブオイル 大さじ 2 (40ml)
- シナモンパウダーまたはナツメグ 小さじ 1 (5ml)
作り方
- 人参を大きめの輪切りにし、フードプロセッサーに入れて出来るだけ細かく粉砕する。
- オーブンを170度で予熱スタート。
- 全ての材料をボウルに入れてヘラで混ぜる。
- 天板にオーブンシートを引き、材料をスプーンですくい平たくして均等に並べる。
- 170度のオーブンで12分〜15分焼いたら完成。
アランチーニ風小豆入り玄米コロッケ
材料
- 小豆入り玄米ご飯(小豆無しでも) 約180g
- 人参 1/5本
- 玉ねぎ 1/5個
- 椎茸 中1個
- にんにく 1/2ケ
- トマトピューレ 大さじ1/2〜1
- 豆乳 45cc
- ドライバジル 適宜
- エクストラバージンオリーブ油 適宜
- 自然塩・コショウ 適宜
- 地粉(国産中力粉) 適宜
- パン粉 適宜
- キャノーラ油
- ソース マヨネーズ、ケチャップ
作り方
- 人参 、玉ねぎ、椎茸、にんにくはそれぞれみじん切りにする。
- フライパンにオリーブ油少々引き、にんにくを入れ香りが出たら玉ねぎを加え手早くさっと馴染ませて塩ひとつまみを振り、蓋をし焦げない程度の火加減で蒸し炒めする。
- 玉ねぎの甘い香りがして来たら椎茸、人参の順に加え更に塩ひとつまみを加え蓋をして焦げない程度の火加減で野菜の旨みを引きだすよう蒸し炒めする。
- 3.の野菜の香りが甘くなり艶よくなったらご飯、トマトピューレ、豆乳を加え、全体が馴染むよう炒め混ぜ合わせる。
- 水分が飛びぽってりした状態になったら塩コショウバジルで調味し、バットに空け冷ます。
- 5.のタネを4等分にして丸く成形し、地粉をまぶし→水溶き地粉(溶き地粉は水1:地粉1.5が目安)→パン粉を丁寧につける。
- きつね色の焦げ目がつくようじっくりとカリッと揚げて完成。ソースを添えて。
冷凍豆腐キーマカレーと玄米ご飯
- 冷凍豆腐(木綿) 1丁
- 玉ねぎ 1/2個
- にんにく・生姜 各1片
- ココナッツオイル 大さじ2
- クミンシード 小さじ1
- カレー粉 大さじ1〜
- ケチャップ・醤油各 大さじ1
- 冷凍グリーンピース 1/2カップ
- 塩 適宜
- 添え野菜(サラダ菜、レタス、赤大根ほか)
- 玄米ご飯
作り方
- ココナッツオイルを熱し、クミンシードを加えてはじけさせる。みじん切りの玉ねぎ、にんにく、生姜を加えてよく炒める。
- 自然解凍した豆腐の水気をしっかり絞り、手で崩しながら加えて炒める。
- カレー粉を加えて香りが立つまで炒めたら⭐️と水1/2カップを加え、沸騰したら弱火にして蓋をして10分煮る。
- グリーンピースを加えて火が通ったら塩で調味する。
- サラダと玄米ご飯を添えて完成。
マクロビオティック作り置き・野菜マリネ
材料
- 人参、玉ねぎ、カリフラワー、カラーピーマン、プチトマト、セロリ、など野菜適量
- (マリネ液)
- 菜種油、オリーブオイルなど、保存瓶4分の1くらい
- 米酢 瓶の6分の1くらい
- てんさい糖 大さじ2
- 塩 小さじ2
- こしょう 適量
作り方
- 調味料をすべて瓶に入れ、よく振って混ぜる。
- お好きな野菜を適当に切って液に一晩以上漬ける
玄米の正しい食べ方・方法は?美味しくデトックス効果を出すやり方
合わせて読みたい「デブ卒」の記事!
玄米菜食のダイエット
玄米菜食でのダイエット法ですが、野菜中心のメニューは摂取カロリーが低くなるのでカロリー制限をしている場合にはそのメリットがありそうですね。肉や卵、乳製品などの動物性タンパク質を摂らないという厳格な食事法であれば、代替品として植物性タンパク質をとる必要があります。大豆を原料とした豆腐、揚げ、テンペ(発酵食品のひとつ)や豆乳などを食用して代用することが可能です。
食物繊維やミネラルが玄米や野菜、海藻類からは豊富に摂取できますので、皮膚や粘膜、髪の維持や保護、エネルギー代謝のサポート、便秘の解消にも良さそうです。あまり厳格に守り過ぎないで、少し気楽に一週間単位で帳尻をあわすぐらいの気持ちで献立を考えましょう。いわゆる「ゆる玄米菜食」ぐらいで始めるほうが継続しやすいのではないでしょうか。減量目的のダイエット法は継続が重要です。
まとめ:玄米菜食について
食は人を良くすると書くとよく言いますが、食事は人の身体の状態を維持し改善することでありたいものです。玄米菜食にこだわり過ぎ、肉類・卵・乳製品を完全に摂らない場合、栄養素が不足する可能性も否めません。もちろん、植物由来のタンパク質である豆腐や豆乳で代用することもできますが、テンペなどは一般的でないので近隣のコンビニやスーパーなどでは置いていない場合もあります。
玄米菜食のいいところは、身体本来の機能に即した食品を加工しすぎずに食べるところです。病気の養生中や怪我などからの回復中、成長期などの高カロリーが必要なときは無用なこだわりをせず必要に応じて摂取したいものです。食事は本来栄養摂取のためだけでなく楽しい時間なので、玄米菜食もその人ごとの玄米菜食のメニューやバランス、タイミングをうまく考えて利用したいものですね。