ダイエットと睡眠の関係性
アメリカのコロンビア大学の研究によると、「毎日7~9時間睡眠を取る人は最も肥満率が低い」ということが分かりました。同時に、「5時間睡眠の人は肥満率が50%高い」、「4時間睡眠未満だと73%も肥満率が高くなる」ということも判明しました。
また、異なる研究では、睡眠を8時間前後とると被験者の体重が減少し、その後、5時間前後までカットすると体重のリバウンドが始まるという、睡眠時間と体重の反比例減少が明らかになったそうです。では、なぜ睡眠時間が少ないと、肥満になりやすいのでしょうか?

実はその答えは、食欲を司るホルモン「グレリン」の分泌に関係があります。グレリンは脳の下垂体という部分に働きかけ、成長ホルモンの分泌を促進する大切なホルモンですが、同時に視床下部にも働きかけ、食欲を増進させる役割を持ちます。
睡眠時間が少なくなると、脳は成長ホルモンを分泌させようとグレリンの分泌を促進させ、その結果、食欲が増進され、体重の増加につながるという負の影響が出てくるのです。
一方、睡眠時間をきちんと確保している場合、食欲を抑えるホルモンである「レプチン」の分泌が増えることも分かっています。このレプチンは、脳に「お腹がいっぱいである」という強力な飽食シグナルを伝達する重要な役割を持ち、ダイエットにはとても大切な役割を果たします。
レプチンは「抗肥満ホルモン」として知られており、肥満につながるホルモンであるグレリンに拮抗する唯一のホルモンなのです。
ポイント
レプチンというホルモンは、食欲を抑制する効果があり、睡眠時間をしっかりと取ることで、分泌が促進される。
ダイエットに適切な睡眠方法
ダイエットには睡眠が大切であることが判明しましたが、では、実際にどのように睡眠を取ることが効果的なのでしょうか?
まず第一に、しっかりと睡眠時間を確保するということが挙げられます。実験や統計データを元にすると、ダイエットに最も効果的なのは、「7.5~9時間の睡眠」ということが分かっています。
つまり、朝7時に起きる人は、少なくとも23時30分までには睡眠状態にならなければなりません。入眠までの時間を考えると、23時頃には寝るように心がけるのが良いでしょう。
また、睡眠の質を上げることも重要なポイントです。夜中に何度も目が覚めてしまうような睡眠では、せっかくの抗肥満ホルモンであるレプチンの分泌を妨げてしまいます。良質な睡眠を取ってダイエットにつなげるためにも、睡眠環境や寝る前の行動に気をつける必要があります。
ポイント
ダイエットに最も効果的な睡眠時間は、7.5〜9時間。
今すぐできる睡眠習慣の改善方法
では、具体的に睡眠の質を上げる方法をご紹介します。まずは日々の生活習慣について、下記に当てはまるものがないかチェックしてみてください。

睡眠の質を下げる生活習慣 |
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朝食は基本的に食べない |
パソコンやスマートフォンを、ベッドに入る直前まで使っている |
夕食は寝る直前、または3時間以内に摂っている |
夕食後、紅茶や緑茶、コーヒーなどのカフェインを含む飲み物をよく飲む |
シャワーのみで湯船につからない、もしくは夜に入浴せず、朝のみである |
いかがですか?実はこれらはすべて、あなたの睡眠の質を下げる原因になっているかもしれません。
その理由を解説すると、まず第一に、朝食は体内時計を調節し、夜眠くなるための重要な役割を持ちます。次に、スマートフォンやパソコンは、その刺激の強い光によって、眠気を誘発するホルモンである「メラトニン」の分泌を抑え、スムーズな入眠を妨げます。
また、夕食時間の遅延により、胃の中に食物が十分にある状態で入眠する場合、その消化のために睡眠の質が低下します。飲み物に含まれるカフェインも、交感神経に作用することにより、入眠の妨げにつながります。

なお、入浴は副交感神経を刺激し、眠気を誘うことに効果的なので、入浴せずに寝ようとすると、入眠までの時間が比較的長くなる可能性が高まります。
つまり、上記5つの生活習慣を改めることで、睡眠の質を格段に高めることができます。加えて、睡眠時の環境を整えることも、良質な睡眠をとるためには欠かせないポイントです。
整えるべき睡眠環境 |
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睡眠時の部屋の明るさを、0.3ルクス(月明かり程度、室内がなんとなく見える程度)に調整する |
ドアや窓を閉め、外部からの騒音を遮断する |
暑すぎず寒すぎない温度を保つ。夏は冷房器具と衣類で調整し、冬は電気毛布や湯たんぽによって布団内の温度を上げる |
マットレスや敷き布団は、固すぎず柔らかすぎない体に合ったものを選ぶ |
掛け布団は体を圧迫しない、軽いもの(羽毛布団など)を選ぶ |
睡眠環境を見直し、良質な睡眠を確保することは健康にも大変効果的です。限られた睡眠時間の中で、なるべく質の高い睡眠を取りたいですね。
ポイント
睡眠の質を上げるために、寝る直前にスマートフォンをいじったり、寝る3時間以内に夕食を食べたりすることはやめよう!

現代に生きる私たちの生活は、適切な睡眠時間を取らず、さらに、その貴重な睡眠を妨げるような習慣や環境を実践している可能性が大いにあります。ぜひ睡眠の質を見直し、良質な睡眠で効果的にダイエットを行ってみてはいかがですか?これまで以上に快適なダイエットができるかもしれません。